ハンカチからポケットチーフへ
フォーマルファッションだけではなく、ビジネスファッションにも欠かせないものになりつつあるポケットチーフ。
スーツにネクタイ、そしてポケットチーフという、定番スタイル。
いったいどうやって、ただのハンカチはポケットチーフとして、男性の胸を飾る不動の地位を確立していったのでしょうか。
ポケットチーフがポケットチーフとして使われる直前、まだハンカチとして使われていた頃。
ハンカチは機能的で、尚且つ美的でなければなりませんでした。
吸水性が良く、刺繍に彩られ、光沢を放つシルクや高級な麻で作られていたのです。
ポケットチーフとして使われるようになってからも、そのハンカチの頃と形はなんら変わりありません。
また、初期は、手を拭いたり、汗を押さえたりと、ハンカチとしてもよく使われたそうです。
それでは、そのハンカチの歴史を辿ってみましょう。
古代エジプト
紀元前2000年頃、ネックチーフ(スカーフ)がはエジプトで使われるようになりました。
それらは白いリネンで作られていました。
その後、ハンカチは地中海沿岸を辿り、都市国家のギリシアのエリート層の間で、芳香剤を含ませた一種のフレグランスとして使われるようになります。
共和制ローマ~暗黒時代

そして、共和制ローマでは、聖職者や市民はシルクのローブを身にまとっていました。
また、聖書にもハンカチが登場します。
9世紀に入って、ハンカチはイタリアの貴族達の中で、ポピュラーとなりました。
ハンカチは、イタリアのナイト達にとって、自己主張の為のアイテムとなっていきます。
この様に、ハンカチはそもそもファッションアイテムとしての側面が非常に強い歴史を辿っていきます。
中世~産業革命

そして、ハンカチは1600年代初頭に、キリスト教の聖職者に使われるようになっていきます。
ハンカチは、様々な宗教儀式に使われるようになっていきました。
ただ、まだこの頃はハンカチであっても、「ポケットチーフ」ではありません(もっとも、英語ではpoket squareといます)。
ポケットに入れられるのはもう少し経ってから。男女共に手に握り、そう、今で言うフォーマルファッションの白い手袋と同じ扱いです。
それにまだまだ、ハンカチの形は花びら型や丸など、様々な形があり、デザインが優先されていました。
18世紀、革命の風が欧州に吹き、市民層が台頭し始めると、ハンカチは一般的なものとなっていきます。
そして、有名な逸話が誕生するのもこの頃。
フランス女王のマリー・アントワネットは、年々華美になり、巨大化していくハンカチに嫌悪感を抱くようになりました。それを夫であるルイ16世に話したところ、ルイ16世は「ハンカチは正方形でなければならない」と、ハンカチの形を規定してしまったのです。
今日のポケットチーフの形が正方形に決まったのも、この法律のおかげ、とも言えるでしょう。
ポケットチーフの成立

そして英国においてダンディズムが洗練を続ける19世紀、ポケットチーフは燕尾服などの新フォーマルウェアと共に、フォーマルフアイテムとしての地位を不動の物とします。
19世紀末からは世界中に広まり、日本でもポケットチーフを着用する紳士が多くなり、そればかりかシルクのポケットチーフの生産まで始め、それらは世界中に輸出されました。
この頃、ポケットチーフは紳士にとって、ネクタイと同じくらいに欠かせないものでした。
「紳士はポケットチーフ無しでは外を歩けない」という言葉が残っているくらいです。
イギリス・フランスのフォーマルでは、男性は、ポケットチーフをしていないのならば、それはフォーマル(正式)ではない、とされていました。
第二次大戦後
しかし、第二次大戦後、ポケットチーフを着用する人が少なくなり、スーツスタイルから遠ざかっていきます。
しばらく、結婚式やセレモニーくらいにしか、ポケットチーフが活躍しない時代が続きます。
そしてやっと1980年代後半から、ポケットチーフが再評価され、ビジネスシーンにも戻ってくるのです。
また、このころから、様々な柄・様々な色のポケットチーフが作られていく事となります。
ポケットチーフの語源
ポケットチーフ、というのは和製英語です。
アメリカやイギリスではpocket-squareといいます。
これはそのまま、「ポケットの中の四角」という、分かりやすい言葉です。
日本人は単純に「ポケットチに挿すハンカチ」であるから、ポケットチーフとしたのでしょう。
ではハンカチーフの語源はなんでしょうか。
持ち歩く布を呼ぶ言葉として、”courchief”という単語は、英国やフランスでは少なくとも1223年には使用されていました。
courchiefという単語は”covrir”(覆う)と「chief」(頭)という言葉の組み合わせであるフランス語の”Couvrechief”が語源です。
そして19世紀のイギリスで、手に持ちあるく、という事から(handkerchief)という言葉が生まれたのです。
